薬事日報社説「医師の偏在」に処方はあるのか

薬事日報が「『医師の偏在』に処方はあるのか」というテーマで社説を書いている。

社説「医師の偏在」に処方はあるのか
薬事日報 平成19年6月29日 
http://www.yakuji.co.jp/entry3573.html





社説「医師の偏在」に処方はあるのか
薬事日報 平成19年6月29日 

 小児科、産科、救急医療の勤務医不足が年々深刻さを増している。昨今では都市部でも、医師不足によって小児科や産科が閉鎖に追い込まれる病院が出始めるほどだ。その一方、そうした現状とは裏腹に、わが国の医師免許取得者数は年々増加傾向にある。

 毎年、8000人の医学部卒業生のうち、7000人強の新たな医師免許取得者が誕生しており、現在、わが国の医師数は27万人を超えている。この数字を見ると、医師の絶対数の減少によって、これらの診療科が医師不足に陥っているのではないことは明白だ。にもかかわらず、大病院を中心とした勤務医不足に歯止めがかからないのは、“医師の偏在”にあると言ってよいだろう。

 2004年度に新人医師の臨床研修を義務化した「新医師研修制度」が導入されて以来、勤務医として大学病院の医局に残る研修医は、毎年誕生する7000人の医師のうち、その半数にも満たない3000人程度になったと言われている。

 研修医はこれまで、所属先の大学から各病院へ派遣されるのが通常であった。ところが「新医師研修制度」導入後は、研修医と受け入れ先病院のマッチングにより研修先が決定されるようになった。研修医の希望が聞き入れられることで、すぐに戦力とみなされて、給料も高い中央の有名病院に研修医が集中するという歪み現象を引き起こした。この現象が、へき地での医師不足を助長し、さらなる地域格差を生んだのは言うまでもない。

 新しい医師研修制度は、具体的に小児科、産科にどのような影響を及ぼしたのか。研修医制度の変更により、04年からの2年間は新たな医師の誕生がない空白期間が生じた。この影響で大学病院でさえも医師不足に陥り、それを補うために市中病院へ派遣していた医師を引き上げてしまうケースが多発し、地方の病院の小児科・産科の勤務医不足を加速させていった。

 実際、産婦人科では、全国で大学から常勤医の派遣を受けている病院の4分の1、非常勤の派遣を受けている病院の3分の1が医師の引き上げを経験しているという。1人の研修医の引き上げがキッカケとなって労働環境が悪化し、さらに産婦人科医が辞めていくという悪循環を招き、残った医師だけでは安全な分娩が不可能となって産科を閉鎖した病院も珍しくない。

 とはいえ、小児科、産科の勤務医不足は、医師研修制度改革の影響だけで説明し尽せるものではない。救急医療も含めた小児科、産科の勤務医には、365日24時間対応、重い責任、高いリスクが余儀なく課せられる。

 これら劣悪な労働条件の中で、慢性的な過労に耐えて精いっぱい頑張っているにもかかわらず、待遇面では全く恵まれないという根本的な問題が横たわっているからだ。小児科、産科、救急医療の勤務医が、働き詰めで燃え尽き症候群に陥り、開業の道に進んだ例も多数あるようだ。

 現実に、新人医師の間では、眼科や皮膚科が人気を博しており、小児科、産科、救急医療などは敬遠されがちだと聞く。

 こうした現状を打破するには、産科、小児科、救急医療共に保険点数・診療報酬を増やし、それぞれの診療科の医師を増員する以外に手立てはないだろう。そのためには、まず、勤務医と開業医の収入バランスの是正から取り組む必要があるだろう。


地域医療・自治体病院のマネジメント | コメント(10) | トラックバック(1)2007/06/30(土)14:17

コメント

『偏在』という『偏見』

まだ『偏在』という妄想に浸っているものが、情報発信していることに怒りを覚える

”絶対数が減ってないのに、医師不足”が即、偏在になるとはオメデタイ

絶対数が減ってなくても、相対的に不足する例など山ほどあるというのに。。。
頭の中で、他の可能性を探る能力が欠如しているのだろう

今は医療に求められる質、量とも、数年前とは隔世の感がある。
一人が数人分の労働をしていたのを、普通の労働基準に戻せば、全く人が足りない。

訴訟や医療費削減で、清貧に甘んじる意義を医師が疑問に思っただけで、深刻な医師不足になる
もう、元には戻れない

そう、医療制度、医師を大事にしなかったツケは、莫大な社会損害(=国民負担)となって跳ね返ってくるが、それを医師が望んだ訳ではない。

戦犯は、『医師偏在』などという妄想を流すマスゴミと、医師の良心に悪乗りした国民である。
戦犯を制御できなかった与党・政府も同罪である

2007/06/30(土)22:39| URL | Med_Law #- [ 編集]

皮膚科も眼科も不足

>現実に、新人医師の間では、眼科や皮膚科が人気を博しており、
 新人医師の間ではどうだかしりませんが、あちこちの基幹病院で、眼科や皮膚科が廃止されたために、大学病院の皮膚科は患者数が増えて、紹介受診だけでも裁ききれなくなってます。
 午前中の診療が午後3時にまでずれ込むのは普通で、4時からの教授回診が遅れてしまうぐらいです。もちろん、教授は午前中から飲まず食わずで診察しているわけですが。
 確かに、眼科皮膚科の診療所は増えていますが、手術や悪性腫瘍の治療は病院の皮膚科に紹介せざるをえないのです。

2007/07/01(日)03:31| URL | Inoue #WjBz4HtQ [ 編集]

眼科

今年は阪大の眼科に50人(!)入局したという噂ですが、意外に眼科も勤務医は足りないみたいです。女医率が高く、開業あるいは出産→セミリタイアが多いためでしょうか。

2007/07/01(日)20:46| URL | えっ!? #.J3PU1tU [ 編集]

27万人=沢山=だから足りている?

小児科医・勤務医が足りないと言ってくれているので、無下に否定するのも何ですが・・・。
27万人も医師がいる、7000人も卒業している、だから医師は足りている。これを「明白」と言うのならせめて論拠を示して欲しいものです。単に「27万人=沢山いる=だから足りている」程度の論拠では、「100万円って大金だから何でも買える」と言っているのと同じくらいの滑稽さを感じます。
救急医療・ICU、小児救急・NICU、産科医療を挙げるまでもなく、地域医療や病院での重患の診療は全て24時間体制が求められます。3交代の看護師であれば夜勤1人出すのに8人も必要です。本来なら医師にも同じことが求められて然るべきところを、違法な労働環境によって今の医療は成り立っています。
それらも考慮せずに医師不足を「偏在」のみに帰着させるのはあまりに乱暴だと思います。

2007/07/01(日)22:37| URL | 地方小児科医 #jOHzQI1Q [ 編集]

小生は循環器内科医ですが、将来を考えるにあたり、近視手術やコンタクト、美容などを行える眼科や皮膚科は確かに良いなぁと思うのです。
政府与党厚生省の推し進める超低医療費政策は限界まで来ています。医師も将来の展望を保険外収入に求めるのは当然のことかと思います。その結果として皮膚科や眼科などのマイナー科を選ぶのでしょう。
来年度の改定では初診料120点、再診料5点(50円)という噂です。心不全や不整脈の患者を真剣に診察するより、にんにく注射やプラセンタ注射をやりなさいと暗に言われているように感じます。

2007/07/01(日)23:58| URL | uchitama #- [ 編集]

「偏在」に処方箋があるなら

地域間や診療科間、勤務医・開業医間に偏在がないとは言いませんが、もしそれを正そうとするのであれば「市場原理に基づく正当な報酬の設定」しかないはずです。医師確保に色んな策を弄するのも、それをしたくない、つまり今以上に金を使いたくないと言う前提があるからです。
金を使わずに偏在を是正しようとすれば、あとは「強制」しかありません。学生への高金利の奨学金制度、医師を県の支配下において好きなように動かそうとする制度、根っこのところでは全部同じです。
童話の「北風と太陽」みたいなものですね。
最終的にどちらが勝かは童話が物語っているのではないでしょうか?
医師に限らず、金や強制力だけで人を縛り付け、働かそうとする発想自体が不遜・傲慢なのだと思います。

2007/07/02(月)01:06| URL | 地方小児科医 #jOHzQI1Q [ 編集]

総量の増減と配分は別問題

 偏在があるということと総量の過不足は別問題です。

 総量が過剰であれば偏在を正すことによって全体の構成水準は向上しますが、総量不足の状況で偏在補正に努力しても、結果の方は知れています。

…もちろん、総量が不足しているから分布を放置して良いというわけでもありません。念のため。

2007/07/02(月)12:08| URL | rijin #SFo5/nok [ 編集]

経済学の入門書を読め

>医師の絶対数の減少によって、これらの診療科が医師不足に陥っているのではないことは明白だ。にもかかわらず、大病院を中心とした勤務医不足に歯止めがかからないのは、“医師の偏在”にあると言ってよいだろう。


医師需要の増加を想像することすらできていないお粗末さ。

前提から間違ってるからナンボでも事実から遊離した議論ができるわけだ。

2007/07/03(火)18:23| URL | いのげ #FT/S2lR. [ 編集]

もともとピースが足りていないパズルだもの

どうやったって無駄だよ

2007/07/03(火)22:53| URL | こんた #- [ 編集]

> …もちろん、総量が不足しているから分布を放置して良いというわけでもありません。念のため。

不足の度合いがひどければ、偏在を解消したらどこも力不足で討ち死にということも考えられるので、分布の偏りをなくすようなことはもってのほかということもあるでしょう。
そろそろ、そうするしかないという状況が見えてきていると思います。

そう極端な話でなくとも、「偏在を解消すれば医師不足は解決する」という主張は、医師の多い地域には、日本に住む人たちの健康を維持あるいは向上するのにさほど貢献せず遊んでいる連中がいっぱいいてけしからんという考えを内包している気がして、ひっかかるものがあります。

2007/07/04(水)23:25| URL | hiroo #- [ 編集]

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元埼玉県庁の職員。 現在は埼玉県の坂戸市にある城西大学の経営学部の准教授で行政マネジメントを教えています。

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