命を巡る現場から:第1部/1(その1) 命守る 小児科医療 /広島
毎日新聞の広島版で、小児科医療について特集を組み、かなり長い報道をしている。
思い込みの強い保護者と接する現場の小児科医師の方々の苦労について、比較的リアルに書かれていると思う。
命を巡る現場から:第1部/1(その1) 命守る 小児科医療 /広島
毎日新聞広島版 平成19年1月1日
http://www.mainichi-msn.co.jp/chihou/hiroshima/news/20070101ddlk34100006000c.html
命を巡る現場から:第1部/1(その1) 命守る 小児科医療 /広島
毎日新聞広島版 平成19年1月1日
新しい年が幕を開け、多くの人が期待に胸を膨らませていることだろう。しかし、全国では子どもの自殺や児童虐待、殺人事件など悲惨な事件が後を絶たない。親から子へ受け継がれた命がこんなにも簡単に失われていいのか。命とは何か。命と向き合いながら仕事に取り組む人々を通して、見える命のありようを探してみたい。記者はまず、出産と医療の現場を訪ねた。
◇365日子どもと向き合い
夕方から翌朝まで365日、夜間小児救急に応じている広島市立舟入病院=中区舟入幸町。週末には広島市や廿日市市などから夜間平均で150人の患者が病院を訪れる。午後6時を過ぎるころ、落ち着かない様子の保護者が子どもを抱えてひとり。そしてまたひとり。窓口では看護師が慌ただしく動き、診察室から子どもの泣き声が聞こえてくる。
「患者の大部分は発熱などの初期症状がほとんどで、実際には本当の救急患者は少ない」と小児科部長の兵藤純夫さん(54)。子どもの数は年々減るのに共働きや核家族化などの影響か、夜間に病院を訪れる患者の数は増えている。
舟入病院では、9人の勤務医や広島市医師会や広島大の医師などが、午前8時半から午後5時15分までの日勤▽同6時から午後11時までの準夜帯勤務▽同11時から午前8時半までの深夜勤務−−を繰り返しながら小児救急医療を支えている。平日は夜間に平均100人、休日には同150人が訪れる。医師1人が患者1人を診察できる時間は10分弱が限度。
「急患の保護者は初対面が多い。子どものことで気持ちが高ぶっているから、いかに落ち着かせ、納得させるかが我々の仕事。時間があればゆっくり説明できるが、夜間に同じ対応は出来ない」。そのため、医師はできるだけ簡単な言葉で保護者に子どもの症状を説明する。
「先生、子どもの熱が下がらず何度も吐くのです」。高ぶる保護者に医師らは丁寧に応じる。首にかけた聴診器を耳にあて子どもの胸や背中、口の中を順番に調べる。中には泣き出す子どももいるから大変だ。「ほかに気になるところはありますか」。保護者らの言い分を十分聞いて病状を説明。保護者の顔がふっと緩み「よかったね、終わったよ」と子どもをぎゅっと抱きしめて診察室を出る。
小児救急で命を落とすケースはほとんどないが、中には病状が急変して死亡するケースもある。命を救えなかった悔しさがこみ上げて涙も出る。死を受け入れられない保護者にどう伝えてあげればいいのか、つらいことは多い。
子どもたちには命を大切にしてほしいと思う。「体が不自由でも、障害を負っても、頑張って生きている子どもはいる。いろんな事情があって死を選ぶ人もいる。だが、元気な子どもがぜいたくしてはいけない」
小児救急に休みはない。舟入病院の診察室では今日もまた心の対話が始まっている。【下原知広】
◇一言の助言で親に安心感
「うちの子ども、便が出ないんですが」
「小さい子が1日か2日くらい出ないのは、よくあるから心配しないで」
一言の助言で、不安はぬぐえる。開業して25年になる小児科医の堀江正憲さん(60)=安佐南区祇園2=は「親に安心感を与えること」を心がけている。
開業医の日常は多忙だ。外来や往診に加え、幼稚園や学校での健康診断、乳幼児健診、予防接種。県などが開設している夜間の「小児救急医療電話相談」や、広島市立舟入病院の土日夜間勤務も順番で回ってくる。県医師会の常任理事を務め、講演会や研修の講師もこなす。「日ごろの顔が見える付き合いが大切」と、学校行事への出席や地域の防犯活動にもかかわる。
地域の小児科医は「子育て相談窓口」と言う。核家族化で、育児の知恵が代々継がれない時代。真夏には、診療のついでに「遠出のドライブには多めの飲み物を。渋滞でも子どもが脱水症状にならないように」といった助言を加える。「医療行為」でなくとも、役立つことはたくさんある。
現在は、食物アレルギーがある子ども向けの離乳食の手引きを作成している。約20年前に初版発行にかかわり、全国で約100万部が配布された冊子の改訂版。現場で気付いたことを社会に還元する努力を怠らない。
最近、夜間の小児救急受け付けの増加を気にしている。その役割はもちろん認める。だが、当番に入ると、「薬をもらいに来た」というだけの親や、「今年のインフルエンザは?」といった一般的な相談など、緊急性のないケースに多く出くわすからだ。
「便利な夜の『コンビニ』でいいのか。子どもの生活リズムを考えれば、なるべく昼間に受診してほしい。子どもが病気の時は公休を認めるよう、企業なども協力してほしい」と提言する。
県内では、小児科が主な医師がいない自治体が3町ある(04年現在)。夜間対応に追われるほど小児科医は疲弊し、なり手がますます少なくなる悪循環を懸念している。安心して子育てできる社会の実現のため、小児科医が果たせる役割を提起し、実践し続けている。【宇城昇】
==============
◇夜間診療求める声
県内で365日24時間対応している小児救急医療拠点病院は、広島市立舟入病院▽市立三次中央病院▽厚生連尾道総合病院と福山市内4病院で輪番対応している福山地区−−の4カ所。そのほか、命にかかわる重篤な患者の治療をする救命救急センターが広大病院や県立広島病院など5カ所ある。
こうした病院は広島市や比較的大きな市にあり、山間部や島しょ部など医師自体が少ない地域では夜間に診察を受けるだけでも深刻な問題だ。広島市北部や安芸太田町など県北西部のほか、廿日市市や大竹市など県西部の住民らは近くに24時間対応の拠点病院がないため、舟入病院などに駆け込むが、長時間待たされるケースが多いという。
そのため、安佐南区や安佐北区の保護者などでつくる市民グループが、近くのスーパーや百貨店で街頭署名運動をして小児夜間診療を求める署名を広島市議会に1万1025人分出したほか、県議会にも130団体の団体署名を提出している。
◇地域差
県内で、小児科を主な診療科とする医師は349人(県まとめ、04年現在)。98年の330人から微増傾向にはあるが、安芸太田、大崎上島、神石高原の3町では、1人もいない。
15歳未満人口10万人当たりの小児科医師数の県平均は84.36で、全国平均83.47とほぼ同じ。県内の上位は(1)広島市中区336.05(2)南区205.84(3)呉市129.81(4)尾道市129.33(5)坂町128.62。一方、竹原市25.25▽安芸高田市27.33▽庄原市39.15−−など、市部の比較でも明らかな地域差があった。政令指定都市から過疎地まで抱えている県内事情を反映した形になっている。
◇ねじれ現象
県医療対策室によると、15歳未満人口が減少する一方で、小児救急患者が増加するねじれ現象が起きているという。表は舟入病院を訪れた夜間小児救急患者と救急で同病院の医療圏域とされる15歳未満人口を示している。患者数が99年度の2万7764人から徐々に増加を始め、05年度には3万7321人まで達している。15歳未満人口は99年度の22万8531人から05年度には20万7506人に減少している。
一方、同病院のほか、小児救急医療拠点病院とされている市立三次中央病院、厚生連尾道総合病院の3病院の救急患者数も増加の傾向にあり、05年度は5万5627人が受診している。
地域医療・自治体病院のマネジメント
| コメント(2) | トラックバック(0)
│2007/01/02(火)21:35
