クローズアップ2008:夕張市破綻1年 将来像見えず
毎日新聞が、07年3月6日の財政再建団体入り後、1年経過した夕張の現状について報道している。
クローズアップ2008:夕張市破綻1年 将来像見えず
毎日新聞 2008年3月5日 東京朝刊
http://mainichi.jp/area/shizuoka/news/20080307ddlk22040174000c.html
クローズアップ2008:夕張市破綻1年 将来像見えず
毎日新聞 2008年3月5日 東京朝刊
◇企業誘致進まず人口流出が加速、孤独死も相次ぎ
「破産した自治体」として全国から注目を集めた北海道夕張市。昨年3月6日の財政再建団体入り後、「全国最低の行政サービス」と「全国最高の市民負担」が、高齢化の進んだ市民生活を揺さぶってきた。再生の要の企業誘致は進まず、人口流出が加速している。一方で、「第二の夕張」になりたくないと、なりふり構わぬ歳出カットに取り組む他の自治体。財政破綻(はたん)1年後の夕張の今と、「夕張ショック」の余波を追った。【柴沼均、久野華代、真野森作、横田愛】
2日朝、夕張市内唯一のプール「市スウィミングセンター」の屋根が崩落しているのが見つかった。財政破綻前は通年で運営し、冬季も暖房で屋根の雪は解けていた。昨年からプールを開けるのは夏季約1カ月のみ。豪雪地帯・夕張の同日の積雪は122センチで、雪の重みが老朽化した屋根を押しつぶした。
市内には他に4カ所の屋外プールがあったが、すべて閉鎖。藤倉肇市長は「子供のために修復しなければ」と話すが、財政再建計画外の巨額の費用を捻出(ねんしゅつ)できる当てはない。近所の主婦、大槻裕子さん(44)は「幼稚園児の娘は(市内で)泳げる機会がなくなってしまう」と残念がる。
1月30日朝、1人暮らしの伊藤太郎さん(71)が自宅の玄関先で雪に埋まって死亡しているのが見つかった。前日の昼間に雪かき中、屋根から落ちた雪の下敷きになったらしい。隣家はわずか数メートル先だが、積もった雪が壁になり、近所の住民も気付かなかった。除雪車の出動回数が減らされ、高齢者の生活を圧迫している。
高齢化率(人口に占める65歳以上の割合)は4割を超える。全国の市で最も高く、孤独死の問題は深刻だ。市によると、07年に自宅で死亡した1人暮らしの高齢者は判明しているだけで9人。死後3日ほどたって発見されるケースが多かった。市は「お願いしている町内会の見回りも高齢者」と窮状を明かす。
人口流出を食い止め、市の税収を増やす切り札に位置づけたはずの企業誘致も破綻後の成果はゼロ。夕張市沼ノ沢で工業団地を分譲する「中小企業基盤整備機構」(本部・東京)は昨年4月から全国最安値の1坪(3・3平方メートル)707円まで分譲価格を引き下げた。だが、企業側は「光回線どころかADSL(非対称デジタル加入者線)もないなんて」と脆弱(ぜいじゃく)なインフラへの不満を突きつけた。
ADSL回線を通すには一定の利用者が必要だ。同機構は今月に入り、周辺住民にADSL加入を呼びかけ始めたが、高齢者が多く、インターネット需要はあまりない。通信インフラの不足に加えて若い働き手が少ないことも企業が二の足を踏む要因だ。
市にカネがないことを前提としたギリギリの歳出カットが企業誘致の足かせとなり、市の財政をさらに悪化させる悪循環。08、09年度の借金返済額は10億円強の予定だが、年々増えて24年度は30億円近くになる。「破綻のまち」の知名度を利用した観光PRの動きが活発化してはいるが、経済振興なしに計画達成は不可能。市の将来像は見えないままだ。
◇がけっぷち赤字市町村、歳出削減に必死
夕張市の財政破綻をきっかけに制定された自治体財政健全化法は、国が自治体財政への監視を強め、財政の悪化した自治体を早期にあぶり出すのが狙いだ。08年度決算から適用されるため、がけっぷち状態の市町村は必死の歳出削減に取り組む。
職員給与30%削減、文化会館休止、水道使用料5%引き上げ−−。07年度末の連結実質赤字比率が破綻基準の40%を大幅に超える73%と推計された北海道赤平(あかびら)市は2月末、財政健全化計画を発表した。
中でも経営難の市立赤平総合病院の病床削減や産婦人科・皮膚科の休止は、市民生活に大きな影響を及ぼす。94年に地元の炭鉱が閉山し、人口が急減。さらに04年度から国が必修化した臨床研修制度で大学医局に医師を引き揚げられ、医師不足が深刻化した。
約130億円を投資したスキー場の借金返済に苦しむ長野県王滝村も破綻の危機にある自治体の一つだ。07年度は職員給与を20%削減。村立診療所の歯科を05年度末で廃止し、村道の草刈りは住民に依頼。懸命の歳出カットで破綻回避を狙う。
地方財政が悪化した背景には、国が90年代に景気対策として公共事業の大盤振る舞いを求めたツケが借金となって残り、「三位一体改革」の地方交付税削減が追い打ちをかけた経緯がある。赤平市の幹部からは「夕張みたいに(放漫財政を)やったわけではないのに」と恨み節も漏れた。
◇質を高める改革、自治体は実践を−−山崎幹根・北海道大公共政策大学院教授(地方自治論)の話
自治体財政健全化法は、連結会計によって自治体経営の実態を具体的に明らかにした意義は大きい。夕張問題と連動し、全国的に自治体運営への関心が高まった。ただし、総務省の地方に対する統制手段とならないか、過疎地など条件が不利な自治体と放漫経営の自治体を一律に比較するのが妥当か、議論の余地はある。
ここ10年余り、一貫性、安定性の欠けた国の地方財政政策に地方は翻弄(ほんろう)されてきた。自治体側も、住民を含めた新しい地域経営の仕組みなど、質を高める改革を実践すべきだ。
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■ことば
◇自治体財政健全化法
自治体の財政破綻を未然に防止しようと07年6月に制定。それまでの地方財政再建促進特別措置法は、財政規模に対する普通会計の赤字割合「実質赤字比率」だけで自治体財政の健全度を測っていたが、夕張市が抱え込んだ第三セクターや事業会計の「隠れ赤字」を見抜けなかった反省から、新法では事業会計も含む「連結実質赤字比率」など新たに3指標を追加。同比率の場合、当面は40%以上になったら破綻状態の「財政再生団体」と認定され、国の管理下に入る。08年度決算から適用される。
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■夕張市財政破綻で何が変わった?■
・人口 1万3380人 →1万2169人
(06年1月末) (08年1月末)
・市民税 個人均等割り 3000円→3500円
個人所得割り 6%→6.5%
・入湯税(150円)の新設
・下水道料金10立方メートル当たり1470円→2440円
・バスの敬老パス 乗車1回200円→300円
・ごみ収集を有料化(家庭ごみ1リットル2円など)
・小学校 7校→1校(11年度)
・中学校 4校→1校(10年度)
・市立病院→民営化して診療所に
・市営プール 5カ所→1カ所(屋根崩落)
・市民会館、観光施設の運営を民間委託に
・市立図書館を閉鎖
・公衆便所 7カ所→2カ所
・市長給与 月86万2000円→25万9000円
・市職員給与 596万3500円→392万円
(45歳主任、配偶者・子供2人)
・市職員数 306人(06年4月)→113人
・市議会定数 18→9
