町立松前病院の3年間の経緯について

松前病院の木村院長が辞任をした原因は、新聞記事のように地方独立行政法人の議案に対する町との考えの相違だけでない。

3年間の簡単な経緯を示す。
なお内容については木村院長の確認をいただいている。
松前町には確認していないので一方からの確認ではあることに注意されたい。

3年前、木村院長(病院事業管理者)の片腕として力をふるい赤字病院を黒字病院に経営再建をした事務長の再任用をめぐって病院と町・議会の意見が対立した。

黒字決算を町議会が不認定とし、また、2013年4月23日に町長と木村院長の間で結ばれた覚書のほとんどが履行されなかったことで、2013年9月27日木村院長は辞表を提出した。

木村院長とともに10名在籍した医師のうち7名が退職届けを提出。このままでは2014年4月には医師が3名しか残らない事態となった。

町中が大騒ぎとなり、町長が謝罪。
町議会議員は木村院長のところを訪問し、頭を下げたという。

12月17日の議会で町長は独立行政法人化について調査費を予算化することを表明。

12月19日に道庁と前田一男代議士(前松前町長)、町長及び町長部局、松前病院を守る会、マスメディアが同席した席で、町長は病院事業に全面的に協力し、病院事業に関しては事業管理者に任せることを約束した。

木村院長は「事態を慎重に見ながら当面ここでの医療を続けて参りたい」として辞意を保留する意思を表明した。最終的に医師は6名が残留することとなった。

撤回の際、その時経営の自由度を高めるために、町長は地方独立行政法人化の方向性を示し、その旨新聞報道がなされた。

松前町議会は議会改革をすることを約束した。

しかし、実際は、地方独立行政法人化は先送りされた。
通常であれば1年半あれば地方独立行政法人化は可能だが2年半経っても地方独立行政法人化は行われていない。

町議会改革も、反問権の創設が見送られるなど、木村院長の期待に応える改革がなされなかった。

木村院長の辞任直前の2013年9月3日に、ある町民A(昔、病院の事務長だった)が松前病院の公金支出について木村院長を相手に職員措置要求の住民監査請求を行う(病院改築構想策定に関する・就学資金貸付に関する返還請求・診療報酬過剰請求の3つについて木村院長等に返還請求をすることを求める)。過剰請求については木村院長に対して8986万円の返還を求めている。

監査委員は請求を棄却。
その後2014年1月、町民Aが住民監査請求の結果を不服とし、木村院長を被告にして公金支出返還請求事件の住民訴訟を提起。
木村院長及び訴外前事務長に9613万8292円を松前町に支払うよう請求を行う。
2014年10月24日の判決で木村院長全面勝訴の判決が出るが、訴訟対応のための木村院長の心労は非常に大きかった。

院長辞職騒ぎの間、木村院長のところへ誹謗中傷に近い匿名文書が数多く送られた。

2015年11月第1回地域医療の今後のあり方に関する調査特別委員会が開催された。
特別委員会では、一部議員の嫌がらせに近い質問が続いた。
2016年2月23日の第4回委員会では、委員会の議論の理不尽さに木村院長が抗議の発言をする。

町長との2015年10月28日の話し合いで、3月または6月議会で地方独立行政法人の定款提案を目指す方向で進んでいた。
3月議会での提案は町長により「この4月町長選挙が予定されており町民の審判をいただいた後に、責任のある対応をするべきと判断しているところで、第1回定例会におきまして、定款の提案をできない」「町民の皆さんの審判を受けた後に、責任のある対応をするべきと判断した」

6月7日午後2時半からの木村院長と町長の意見交換で、町長は職員アンケートを行うことを求めた。条例提案は6月議会に追加議案として提出するか、それとも7月に臨時議会を開いて提案する方針を示す。
午後2時43分木村院長は松前町長に辞意を表明する。

なお、地方独立行政法人化とは別に松前病院の建て替えの話しが進んでおり、病院は独法化と改築を同時進行で行なうことを求めてきた。一方、松前町は地方独立行政法人化よりも病院の建て替えを先に進めることを示唆している。

木村院長は、地方独立行政法人化を図ることで、病院の建築費を安くすることもできると考えていた。

なお、総務省自治財政局準公営企業室「公立病院経営改革事例集(平成28年3月)」では、「地方独立行政法人堺市立病院機構」が新病院本体工事の契約にあたり、「従来の『価格による入札方式』ではなく『総合評価落札方式』を採用するほか、民間企業に準じた建築一括工事などの工事発注手法を採用し、工事費の縮減、工期短縮に努めた(事例集172頁)」と紹介されている。

公立病院経営改革事例集(平成28年3月)
http://www.soumu.go.jp/main_content/000405335.pdf


地域医療・自治体病院のマネジメント2016/06/15(水)16:54

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プロフィール

元埼玉県庁の職員。 現在は埼玉県の坂戸市にある城西大学の経営学部の教授で行政マネジメントを教えています。

伊関友伸

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